大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和27年(ネ)1083号 判決

控訴人訴訟代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人訴訟代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

<立証省略>

三、理  由

控訴人が昭和二十五年十月十三日訴外佐藤甚市に対する被控訴人主張の債務名義に基き同訴外人所有の東京都葛飾区下小松町千百五番地所在家屋番号同町八百六十五番の七木造木羽葺平家建居宅一棟建坪五十一坪七合七勺外四筆の宅地につき東京地方裁判所に強制競売の申立をなし同庁昭和二十五年(ヌ)第一六七号不動産競売事件として繋属し即日これら不動産に対し強制競売開始決定があり翌十四日その旨登記簿に記入せられたことは当事者間に争のない事実である。

次に成立に争のない甲第一ないし第三号証当審における被控訴人本人の尋問の結果を総合するときは被控訴人も前記訴外人に対し債権を有しその弁済に代えて前記建物の所有権を取得しようとしたが同建物は既に前示の如く控訴人の申立により競売中の物件であつたので同二十六年三月二十九日被控訴人は控訴人に懇請して同人に対し金十万円を支払うと共に控訴人は前記競売物件中本件建物について同月三十日までに右競売の申立を取下げる旨の合意が両者間に成立したこと、が認められる。控訴人は右金十万円は債権の弁済として受取つたものでこれにより競売期日の延期を承諾したに止り、競売の取下を約したことがない旨主張するけれども、これに副う当審における控訴人の供述も前顕甲第一号証に照らし到底採用し難く他に前示認定を覆すに足る証拠はない。

そして被控訴人は前記競売手続において執行力ある正本に基き配当要求をしたものであること、並びに未だ競買申出人もないことは当事者間に争がないから、被控訴人は前記競売手続の利害関係人として競売申立人たる控訴人を相手方として前記取下の合意に基き強制執行の方法の異議等により右物件に対する強制競売開始決定の取消を求める等他の救済手段に訴える道はあるにしても(大正十五年二月二十四日大審院第三民事部言渡判決参照)これがため訴により競売申立人たる控訴人に対し前記建物に対する競売手続の取下即ちかかる意思表示を求める給付の判決を訴求する利益はこれを肯定する妨げとなるものでないから、(昭和十二年六月十九日大審院第四民事部言渡判決参照)被控訴人の本訴請求は正当としてこれを認容すべく、これと同趣旨に出でた原判決は相当であるから、民事訴訟法第三百八十四条に則り本件控訴を棄却すべく控訴費用の負担につき同法第八十九条第九十五条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 菅野次郎 坂本謁夫 吉田作穂)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!